日本労働年鑑 特集版 太平洋戦争下の労働者状態 The Labour Year Book of Japan special ed. 第三編 賃金と賃金統制 第三章 賃金統制の展開過程 まず戦時中の労働時間の推移を示すと第55表のごとくである。これは、実際に就業した時間(早出・残業・遅出・早退を加減したもの)であって、休憩時間をも含む時間である。労働時間は戦時中、徐々にではあるが一貫して増大していった。 労働時間の増大傾向に対してはすでに「軍需品工場ニ対スル指導方針」(一九三七年一〇月、厚生省社会局長指示)、「軍需品工場ニ於ケル交替制実施ニ関スル件」通牒(一九三八年八月)が出され、過長労働時間の抑制と交替制の奨励がなされたがいっこうに効果はあがらなかった。一九三九年三月には工場就業時間制限令が公布され五月から実施された。これは、金属、機械器具工業の、工場法適用工場において男子労働者(一六歳以