(2010年8月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) どれだけ近代的なものを誇ろうとも、現代の中国には19世紀の名残がたくさんある。内陸部をようやく外の世界に開放する新しい鉄道、労働環境が劣悪な工場の数々――。今、鉄鋼を山のように生産し、世界で確たる地位を得ようとするこの国では、自信に満ちた新たな国家アイデンティティーが形成されつつある。 アジアのほかの地域でも同じような時代の名残を感じ取ることができる。というのも今、中国ばかりでなく、インド、韓国、オーストラリアが揃って自国海軍に多額の投資を行い、大海に送り出す外洋艦隊を増強している。同じことはアジア地域の外交についても言える。戦後の米国覇権の時代に取って代わり、勢力均衡が不安定になりつつあるのだ。 新たに出現した地政学のドラマを浮き彫りにしたのが、7月末にヒラリー・クリントン米国務長官がベトナム・ハノイで発した興味深い声明だ。長官は