■ゼノンのパラドックス━アキレスと亀 堀越二郎と本庄がドイツに視察旅行した際、その圧倒的な技術力、工業力を目の前にして「アキレスと亀」の寓話に擬え、亀(欧米の列強)に決して追いつく事の出来ないアキレス(日本)の現状を憂うシークエンスがあります。堀辰雄の小説『風立ちぬ』にはポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節“Le vent se lève, il faut tenter de vivre”からの引用があり*1、ヴァレリーの詩にもゼノンの4つのパラドックスのひとつ、「アキレスと亀」が登場するんですね。*2。俊足のアキレスが足の遅い亀と競争してもなぜ勝てないのか━それはアキレスが亀の後方から出発するという大前提があるからで、日本より早く工業化、近代化の進んだ欧米(亀)と、列強に追い付け、追い越せと競争しても、アキレスは絶対に亀には追いつけない。アキレスが亀の出発点に到着しても、足の遅い亀