去年、猫が死んだ。 父の実家で飼われていたその猫は、先代の猫が亡くなった後、祖母が当時もう閉まるところだった野菜市場から連れてきた子猫だった。祖母はこれまで飼ってきた猫にオスだったらチビ、メスだったらミーコと名付けていてその猫はミーコだった。祖母と祖父はミーコを飼い始めて数年で老人ホームにいる時間の方が長くなっていた。母は家を空けることが増えた祖父母の留守の間、ミーコの世話と畑の世話をする傍ら、地元を離れた僕にメールでその様子を知らせてくれていた。ミーコは人見知りで母の前に姿を現してはいたが撫でさせることはなく、僕や従兄弟が集まるお盆や年末年始になると、きまってどこかに隠れていた。たまに実家に寄った際、人気の無い時期に祖父母の家を訪れるとミーコは屋根の上や遠くに僕の姿を認めて、すぐにどこかへ隠れてしまった。 ミーコが父の実家で飼われてから、僕が東京へ出てから十年と少し経っていた。正月に母が