助手になって初めて科研費を貰ってうれしかった思い出も、はるか昔のことになった。もちろん、私も若い頃は研究費の綱渡りで苦しい思いをした。自分では、いい申請書だと思っていても不採択の通知をもらい、落胆していると秋に補欠採択の連絡が届き、交付申請書と次の申請書をほぼ同時に書いたという経験を2度もしたのを今もよく覚えている。私の研究のほぼすべてが科研費に支えられてきたこと、とりわけ近年は特別推進研究のサポートを頂いてここまで研究を進めることができたことに心から感謝している。 文科省、JSPSには、基礎研究を支えるべく科研費について様々な工夫をして頂いているが、私が特に生命科学の領域の研究に関して、科研費の制度について日頃思うことについて述べてみる。 科学研究費“補助金”とは、元来研究ができる環境が整った上で、さらに成果が期待できる研究をまさに「補助」して支援する制度であり、従って補助事業に資さない