家庭教師としての経験も5年になった。入れ替わりの激しいこの業界だから、ベテランと言ってもいいだろう。これは「プロ」としての経験という意味だ。大学生のアルバイトとか、そういうのは除外したい。 その私が、いくつかの例外的なケースを除いてほぼ最初からずっと厳格に適用してきているルーチンがある。それは、初回の指導時に、「なんで勉強するんですか?」と生徒に聞くことだ。どうしても都合で第1回めにできないときには2回めとか3回めになる場合もあるが、できるだけ早い時期にこれを確認しておく。 本当は、「勉強」という言葉も使いたくない。これは誤用だし、危険な言葉だ。けれど、「学習」みたいなよそ行きの言葉では生徒と話が通じないから、しかたなしに使って尋ねる。「勉強は好きですか?」「好きじゃないです」「じゃあなぜ、好きじゃないことをするんですか? なぜ勉強するんですか?」すぐに答える生徒は多くない。たいていは、こ