島野律子『むらさきのかわ』(ふらんす堂、2012年10月13日発行) 島野律子『むらさきのかわ』は一冊の「長編詩」なのだろうか。いくつもの断片で構成されている。とりあえず「断片」と読んだのは、何行かことばがあったあと空白があり、次のことばのあつまりが必ず新しいページから始まるからである。 その断片の特徴は句読点がないことである。句読点がなくて、改行がある。そして、その句読点のない「1行」(次の改行までを、とりあえず1行と呼んでみる)は、ほんとうに1行(ひとつの文章)なのか、それとも複数の行(複数の文章)なのか、よく分からない。 暗い空になって道の上の枝が厚く花をつける夜の上のほうをうっすらと見つめ ながら道を横切って白いライトの下にはまるかわいていく空まで肩をこすって 近寄っていく この書き出しは、 暗い空になって道の上の枝が厚く花をつける。夜の上のほうをうっすらと見つめ ながら道を横切っ