巨大道路とコカ・コーラ、そして遊牧民(前編) ノンフィクション作家=島村 菜津氏 水を求めたらコカ・コーラが出た! モーリタニアを出てこうして2日目の午後、マリの国境から30分ほどでナラという村に着いた。 狡猾(こうかつ)なミーシャ(夫)は、この時になってやっと、運転手のおやじさんに2人分の60ドルと、おまけの10ドルを支払う。普通の外国人のバックパッカーが、より快適で、より人道的な車で旅して、1人50ドルだそうだから、妥当な値だ。 中古トヨタも、そろそろ買い換えの時期ようだし、助手のお駄賃も要るだろう。私も、心の底から尊敬の念を込めて「ありがとうございました」と、頭を下げた。すると、終始、無表情だったおやじさんが、この時ばかりは白い歯を見せて笑い、さっと、どこへか姿を消した。 乾きは、頂点に達していた。まずは水探しだ。 「水、水……」とつぶやきながら村を歩くと、ほどなく1