あるクモのベビーフードにおける生物学 母親は子供のために犠牲を払うものだが,ほとんどの生物ではこの利他行動は一時的なものだ。産卵が終わり,生まれた子供が巣立ち,命が続いていく。だがイワガネグモの一種ステゴディフス・リネアトゥス(Stegodyphus lineatus)の場合は違う。イスラエルのネゲブ砂漠に生息するこのクモは母性愛を究極の,そして永遠の形で実践する。子供に自分を食べさせるのだ。 昆虫学者は母親食というこのむごい子育て戦略について長年疑問に思ってきた。母親はそのまま食べられるのか,それとも子供たちが食べやすいよう自分の内臓を下ごしらえするのか? 最近の研究によって後者が正解だと判明した。Journal of Arachnology誌に報告されたその研究によると,卵が孵化する前から母グモの組織の分解が始まる。「まるで母グモが前もって計画していたかのように,すべてが実際に作り直さ
![お母さん,あなたを食べていい?〜日経サイエンス2015年12月号より](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b283e22ecd1caf616c45799c6296e0c2020625e7/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.nikkei-science.com%2Fwp-content%2Fthemes%2Fnikkeiscience%2Fimages%2Fog.png)