牟子『理惑論』(15)仏伝④ ときに てんち おおいに うごき きゅうちゅう みな あきらかなり 時に天地大いに動き、宮中皆明かなり。 そのとき、天地が激しく震動し、宮殿のなかまで一気に明るくなった。 そのひ おうけの しょうえも また いちじを うむ 其の日王家の青衣(1)も復た一児を産む。 その日、〔釈迦族の王家の〕女奴隷が一人の赤ちゃんを産み、 【青衣】奴隷の別名。 きゅうちゅうの はくばも また はっくを にゅうす 厩中の白馬も亦白駒(1)を乳す。 厩舎の白馬もまた一頭の白い仔馬を産んだ。 【白駒】白い馬。ここでは白馬が生んだ白い子馬を指す。 ぬ あざなは しゃのく うまを けんだかと いう 奴字(1)は車匿(2)、馬を揵陟(3)と曰ふ。 その女奴隷の息子の名は車匿(チャンダカ)、白い仔馬の名は揵陟(カンタカ)と言った。 【字】本名以外に付ける名前。あだ名。 【車匿】太子時代の釈尊