一 その日。 会社の慰安旅行から帰ってきたのび太のパパは、 「温泉につかりながら、一杯やったんだ。ひさしぶりにのんびりと生き返ったような気がしたよ」 と、いったものである。 膳の上には、蜆の味噌汁、葱をきざみ入れた炒り卵に焼海苔などが出ていて、 「この蜆汁。さすがはママ、粉山椒が程よくきいている」 などとパパ、上きげんである。 二階の勉強部屋にもどりながら、のび太がドラえもんに尋(き)いた。 「温泉てそんなにいいものなの?」 「入ってみる?」 「つれてってくれるの?」 「いや」 いいながら、ドラえもんは、腹のポケットの中に手をさし入れた。 「この部屋に温泉が湧き出すんだ」 常日頃、のび太のわがままな要求に応えているドラえもんにとって、のび太の勉強部屋に温泉をしつらえるなど、 (まるで、気が抜けてしまうほど‥‥) に、たやすいことなのである。 「〔温泉ロープ〕!」 取り出したのは、一見何の変
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