「19兆円ですよ。そんな巨額の金を、こっそりと電気料金に上乗せしていいんですか」。2004年の春、経済産業省の一室で上司に詰め寄る若い官僚たちがいた。使用済み核燃料を再処理、プルトニウムなどを取り出す核燃料サイクル事業。これに膨大な費用をかける愚かしさを、推進する立場の経産官僚が説いた。クーデターの始まりだった。 東京電力福島第1原発事故でサイクル事業も岐路に立つ。7年前の官僚たちの行動が、今再び、重い問いを投げかける。 最後のチャンス 「19兆円の請求書―止まらない核燃料サイクル―」と題する文書が霞が関や永田町を飛び交った。作成者は彼らだ。文書は①再処理工場を運用すると、総額で19兆円、場合によっては50兆円がかかる②高速増殖炉の実用化のめどが立っていない③放射性廃棄物の体積が大幅に増加する―などと指摘。「国は時代遅れになった政策の誤りを認められない。費用は国民の負担に転嫁されようとして