第6回 世界一おひとりさまに優しい街 2017.08.30 更新 ごはんを食べながらおしゃべりするのは楽しいもので、飲食店はいつも客の声で賑わっている。ざわつく店内で目にしたもの、漏れ聞こえた単語から、時として奇妙なシンクロニシティが生まれ、離れた場所でよく似た会話が連鎖的に発生することもある。「もらいあくび」ならぬ「もらい会話」のような現象だ。 ブライアントパーク近くのベーカリーカフェ「メゾンカイザー」で昼食を摂っていたある日、右隣と左隣の客が、ほぼ同時に日本の話を始めた。右隣の女子三人組が癖の強い英語で海外旅行体験を語り、「バンコクもよかったけど、一番お気に入りは、やっぱり日本かな」と言う。左隣の中年男性はパンをちぎりながら向かいの恋人に「そういえば君、しばらく日本勤務だったよね?」と訊く。 すぐ横の席に日本人の私が座ったことと無関係ではないだろう。二組がふと同じ国のことを連想し、間に
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