愛犬の鼻のまわりや目のまわりに、”黒いイボ“のようなものがついていることがある。指ではさみ、そっと前後にゆらしていると、愛犬の体から離れ、急にもぞもぞと動き出す。ダニの仲間のなかでも体が大きく、動物の血を吸って生きるマダニの一種である。 地球上にダニの仲間は五十万種類程度いるといわれる(判明しているのは約四万種)が、そのなかで日本で犬に取りつくマダニの仲間は六属二十一種が知られている。どういうわけか、マダニが犬の体に取りついて、何日も血を吸っていても、犬は気にする素振りを見せない。ときには発見が遅れ、黒々とした大きな異形のマダニが、犬の皮膚に頭を突き立てているのを目の当たりにして、胆をつぶすこともある。 ついでにいえば、ダニはノミと並んで、動物の体表に寄生する外部寄生虫の代表だが、ノミは脚が六本の昆虫類なのに対し、ダニは脚が八本のクモ類であり、体の生理も生態も、まったく異なる生き物である。