社員を大事にするという、松下幸之助の原点を推測できるような話をしてくれたことがある。 「きみ、社員は大事にせんとあかんよ。わしが、店を始めたころや。そのころは、店自体も小さいながら、それでも、次第に発展しておったから、人を採らんといかんわな。それで募集すると。けど、誰も来ぃへんわけや、早い話。ところが、時折、応募して来てくれる者がいる。こっちはな、とにかく人が欲しいから、まあ、誰でもいいというわけやないけど、そこそこであれば、決めるんや。明日から、来なさいと言う。ところが、そう言って本当に明日から来てくれるかどうか、心配になる。翌朝、その子が来てくれるか、表の道に出て、角のところで、そっと覗いていて、遠くから歩いてくる彼の姿を見つけると、嬉しかったな。よう来てくれた。すぐに店に戻って、待つんや。そんな状態やったな。だから、その子を育てんといかん、立派な人に育てんといかん、と心のなかで誓って