宮下毬菜 はじめに オタモイ海岸は、小樽市の北西部にあり、高島岬から塩谷湾までの約10kmに及ぶ海岸線の一部で、付近には赤岩山(371m)など標高200m前後の急峻な崖と奇岩が連なっている。一帯は昭和38年(1963年)ニセコ積丹小樽海岸国定公園に指定され、祝津・赤岩海岸とともに雄大な景観を誇り、訪れる人々を魅了している。 断崖絶壁の中腹に、龍宮閣、弁天閣、弁天閣食堂など龍宮城に模した建物を、小樽市内の料亭「蛇の目」の経営者、加藤秋太郎が建築した。最盛期には1日数千人の人々で賑わったこの施設も戦争が始まると贅沢とみなされ客足が遠のき、戦後、これからという昭和27年(1952年)5月9日、午後4時26分、かまどの火の不始末により出火し、焼失した。 また、オタモイには「子宝地蔵」として近年まで多くの参拝者が訪れてきた「オタモイ地蔵尊」が存在する。 今回の調査は、加藤秋太郎はなぜこのような崖に遊