あの羽生善治が、当時14歳の藤井聡太に頭を垂れた。中学生棋士のプロデビューから数カ月、衝撃的な非公式戦の映像は、現在に至るまでの将棋人気の発火点となった。「もし藤井君が全敗したら、僕ら2人はクビだな」――ABEMAで放送された『藤井聡太四段 炎の七番勝負』をプロデュースした野月浩貴八段が、当時の舞台裏を明かした。(全3回の1回目/#2、#3へ)※文中敬称略 “初対局”を終えた羽生善治は「すごい人が現れた」 藤井聡太の名前が、初めて世に大きく出た時期を覚えているだろうか。 一般的な認識としては、2016年10月、史上最年少となる14歳2カ月で棋士になったことが報道された時期になるだろう。その後、同年12月のデビュー戦で最年長棋士である加藤一二三九段との対局に勝利し、翌年4月には公式戦11連勝というプロデビュー戦からの新記録を樹立。ここから“藤井聡太狂騒曲”が幕を開けた。 その後も藤井は勝ち続