サシの入り方が美しいことでも知られるクロマグロ。口に含むととろけるような脂の甘みが特徴であり、超希少種としても知られ、大トロの寿司ともなると2貫で最低でも2000円以上はする最高級魚だ。 そんなクロマグロの完全養殖を成功させたのが、近畿大学水産研究所のひとつ、和歌山県串本にある大島実験場だ。近畿大学の名前を取り「近大マグロ」と呼ばれる完全養殖クロマグロは、ほぼすべての魚の完全養殖が成功している中、果たせぬ夢として世界中の研究者が狙っていた“最後の大物”だった。誰もが不可能に近いと思われていたクロマグロの完全養殖化への道のりは困難を極め、近畿大学は成功させるまでに実に32年もの年月を要した。 近畿大学水産研究所が「完全養殖」の研究を開始したのは1970年。海で泳ぐ天然マグロの稚魚や幼魚を捕獲し、養殖する「蓄養マグロ」に対し、「完全養殖」とは、最初から人工孵化で育てた親魚が産んだ卵を孵化させた