歴史とは物語であり、物語とは歴史である。 この小説には、1943年から199X年までの歴史=物語が書かれている。 偽史ないし架空史を描いた小説は数多くあるだろうけれど、これはそうした作品を圧倒するだろう。 何故か。これが犬の歴史=物語だからだ。 犬は数を数えることができない、ということが何度か繰り返されている。 また、犬と同化していくことになる少女もまた、数えない。彼女は、日付を数えず、ゼロの時間を過ごすことで、犬族と同化していく。 この歴史=物語の紀元もまた、ゼロ時間にあった。 かつてゼロ時間を過ごした、数を数えない種族、それが犬族だ。 彼らは人間たちに振り回される。彼らは、人間たちの「個人的な関係」*1に振り回される。 数えることのできない彼らは、歴史=物語という力もまた持つことが出来ない。それゆえ、歴史=物語という力に、あるはその力を持つ人間に振り回されてしまうのだ。 犬たち、少女*
![古川日出男『ベルカ、吠えないのか』 - logical cypher scape2](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/e164f061b5ed7f0f96095348f3eaf288c56a3b6b/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fimages-fe.ssl-images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F416DJYSDQNL._SL160_.jpg)