以下では西島大介著『世界の終わりの魔法使い』についてのネタバレを含みます。未読の方は回避を絶対に推奨。例によって解釈のひとつですので、そこんとこよろしく。なお、引用箇所の句読点は読みやすくするためにこちらで勝手につけたものです。 1.世界への反抗 本作の主人公・ムギは魔法の世界の住人でありながら魔法を使えない。使えないにも関わらず、彼は自分の意思で魔法を使わないとして周囲に抵抗している。代わりに彼はエア・ボードという、魔法とは違う手段で空を飛ぼうと試みる。そして、それは世界への抵抗という意味を持つ。以下は先生からムギへの最期の言葉であり、本作のほとんどすべてといっていい箇所だ。 つまり、世界がわれわれを無視しつづけるのと同じように、われわれもまた世界を無視しつづけるわけだ…。しかし、例えば一冊の本を読むことはそれに抗うことだよ。一冊の本を著すこと、一篇の詩を詠むことは、世界に無視され消えて