佐藤俊=文 text by Shun Sato 松園多聞=写真 photograph by Tamon Matsuzono W杯のメンバー発表で、ジーコが23番目に「マキ」と呼んだ瞬間、巻誠一郎はキョトンとし、「俺が?」というような戸惑いの表情を浮かべた。 一度はジーコに見切られた男だった。3月30日のエクアドル戦後、ジーコに呼ばれて「もう代表に呼ぶことはないだろう」と非情な通告をされた。 だが、巻は簡単には諦めなかった。中断前のJリーグで大活躍し、キリンカップのメンバーに滑り込むと、ブルガリア戦で1ゴールを決め、スコットランド戦も途中出場し、献身的なプレーで必死にアピールした。スコットランド戦が終わった夜、そのまま静岡に移動し、深夜2時半ごろ就寝。翌日、午後1時からのナビスコカップ清水戦で後半29分から途中出場し、最後までアピールを続けた。その諦めない気持ちがジーコに通じたのだ