戦後、日本で数多くの法令が作られた中で、風俗営業法ほど、重要な内容を持ちながら、一般には余り理解されていない法律もまた珍しい。 (中略) 戦前の日本の警察は、風俗営業法(以後風営法)が規制の対象としている風俗関係の営業に対して、広範な領域にわたる強力な警察権を持っていた。 (中略) これは警察犯処罰令(1908年、内務省令160号)、行政警察規則(1875年、太政官通達29号)、行政執行法(1900年法84号)などの法令によって警察に強力な権限が与えられていたからである。 その取締の内容は、営業開始時に警察の許可申請を必要条件とし、衛生、建築、公安や風俗などの見地から微細にわたって規制を行い、その遵守事項を点検するために、警察官が立ち入ることのできる臨検の権限と法令の違反、または一般に「公安ヲ害シ風俗ヲ紊ス虞アル」場合には、警察権による営業停止や許可取り消しができるようになっていた。こうし