今年没後10年となる作家、堀田善衞をアニメーション監督、宮崎駿(67)は「最も影響を受けた人」という。2人に共通するのは、転換期を迎えた時代の本質を見定めようとする視点だ。“乱世”をどう生きるか――。このほど県立神奈川近代文学館で開かれた宮崎監督の講演と会見内容を伝える。(近藤孝) 宮崎監督が、堀田の芥川賞受賞作「広場の孤独」「漢奸(かんかん)」を読んだのは、20歳を過ぎたころだった。1960年の安保闘争が終結してまもなく、まさに時代の結節点に立たされた時、日本の敗戦や朝鮮戦争に直面した知識人の苦悩を描いた二つの小説に触れた。「僕自身かろうじて敗戦を体験し、『日本は何とおろかなことをしたのか』と屈辱を感じていた時に、『広場の孤独』からは『この日本にとどまって生きなければならない』というメッセージを受け取った。『正しいと思うことをやっているからいいんだ』ということではない。自分は何に突き動か