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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (7)

  • 嫌イスラームの再燃を恐れるイスラーム世界

    シャルリー・エブド誌襲撃事件は、世界を震撼させている。欧米諸国を、というより、世界中のイスラーム教徒を、だ。 フランス版9-11事件ともいえるほどの衝撃を与えたこの事件に対して、イスラーム諸国は即刻、テロを糾弾し、フランスへの哀悼を示した。フランスと関係の深い北アフリカ諸国や、経済的なつながりの強い湾岸諸国はむろんのこと、ほとんどの中東の政府、要人が深々と弔意を示している。エジプトにあるスンナ派イスラームの最高学府たるアズハル学院も事件への非難声明を出したし、欧米諸国から「テロリスト」視されているレバノンの武装組織ヒズブッラーですら、惨殺されたフランスの漫画家との連帯を表明している。 意地悪な見方をすれば、この事件がイスラーム教徒の「踏絵」と化しているともいえる。ちょっとでも犯人側をかばうような発言をして、今後吹き荒れるのではと懸念される欧米での嫌イスラーム風潮に巻き込まれて、「テロリスト

  • 「建築のジェノサイド」に気付かない日本

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔9月3日号掲載〕 鎌倉を世界文化遺産に登録しないように──ユネスコ(国連教育科学文化機関)の諮問機関イコモス(国際記念物遺跡会議)がそう勧告したことを受け、松尾崇・鎌倉市長と黒岩祐治・神奈川県知事は会見で無念さをにじませた。 鎌倉市当局は中世の都市としての「物的証拠が不十分」と指摘されたことを認め、私にこう説明した。人類の遺産として保護する価値があると世界に認めてほしいのは、鎌倉を取り囲む山々とその麓に点在する寺院や遺跡だ。そこに日独自のサムライ文化があると自分たちは考えているが、イコモスにはその意図が十分伝わらず、「武家の古都」とする根拠が不十分だと判断された、と。 黒岩知事は今回の勧告に「目の前が真っ暗になるような衝撃を受けた」と語った。こんな妥当な判断に衝撃を受けているようでは、知事の体が心配になる。そもそも県の誇る珠玉・鎌倉がじわじわ破壊さ

  • エジプトの「不愉快な現実」

    エジプトが混沌としている。 断月明けの祝日が終わった直後の8月14日、軍は一斉にムルスィー前大統領派の強制排除に乗り出し、1週間で800人以上の死者を出した。衝突はその後も各地で続き、外出禁止令が発出され、20日にはムスリム同胞団の最高指導者ムハンマド・バディーア氏が拘束された。その前日には、ムバーラク元大統領の保釈可能性が浮上している。これはいったい何だ? 2年半前に転覆した旧体制を復活させることなのか? 混乱しているのは、事態の展開ではない。それを見つめるエジプト、および中東の知識人や活動家たちの言説である。7月の軍クーデター以降同胞団系のメディアは閉められているので、エジプト国内メディアのほとんどが軍に支えられた暫定政権支持派だろうが、その同胞団に対するバッシングは、凄まじい。同胞団=テロリスト、ファシスト、独裁、といった常套句が溢れ、「同胞団は終わった」と主張する。 すでに暫定政

  • エジプト 反革命か革命の継続か

    軍と大衆デモによってムルスィー政権が引き摺り下ろされた7月3日以降、エジプトで起きていることをどう見るか、国内外の議論は二分されている。それは「反革命」か、「革命の継続」か、という議論だ。 二年半前、「1月25日革命」で当時の長期独裁政権たるムバーラク大統領を辞任に追い込んだのは、雑多な勢力からなる大衆デモだった。無党派の若者層を中心に、旧左翼、リベラル、イスラーム主義勢力と、さまざまな人々が結集した。その圧力を背景に、政権内エリートだった軍がムバーラクを見限る形で「革命」は成功したわけだが、その後の選挙、憲法制定といった民主化過程で、ムスリム同胞団が権力を獲得した。異論反論はあれど、一応議会選挙と大統領選挙を経て成立したのが、ムスリム同胞団のムルスィー政権だったのである。 反ムバーラクの一連の運動を「民主化」への試みだったと考えれば、不完全ながらも選挙に基づく議会制民主主義を確立して、ム

  • 選挙政治の是否が問われるエジプト

    6月30日、エジプト各地で発生した大規模デモは、二日を経ても続いている。 カイロのタハリール広場を群集が埋め尽くす姿は、二年半前の2011年、当時のムバーラク大統領を辞任に追い込んだ「1月25日革命」を彷彿とさせる映像だ。参加者自体も、その時デモを主導した若者層が中心である。現ムルスィー政権の成立から一年となったこの日、ムルスィーの政権運営に「ノー」を言うために、再度集まった。 確かに、去年から比べても、カイロの街は荒んだ感じがする。6月初めに訪ねたときも、引ったくりなどが増えたと、さまざまな人たちから聞いた。過去の警察国家が崩壊したせいで、自由を謳歌しすぎる小売商たちは道路の半分くらいまで勝手に露店を広げ、おかげで渋滞は悪化する一方。タハリール広場に面した壁には、相変わらず「落書き」で憤懣を晴らそうと若者が毎日集まってくるが、革命から時間が経つにつれて、閉塞感は目に見えて深まっている。

  • たかが粉ミルク、されど粉ミルク

    3月1日から香港で施行された条例が、中国で大きな論争を引き起こしている。いや、正確に言えば論争はほぼ「香港vs中国」状態に近く、このまま民間感情がヒートアップすれば、経済的な資源を大きく中国に頼っている香港に大きなダメージをもたらしかねない、とわたしは懸念している。 これは正確には既存の「進出口(一般)条例」の2013年版が改正されたものだ。これまでなかった「許可証を持つ者を除き、粉ミルクの輸出を禁ずる。年齢16歳あるいはそれ以上の人物が、24時間以内に1.8キロ、即ち二缶を超える粉ミルクを香港外へ持ち出してはならない」という条項が加えられ、実際に施行初日の1日には香港から中国へ向かう税関で香港人8人を含む10数人がこれに違反したとして拘束され、粉ミルク50缶あまりが押収された。中には一人で15缶を持ちだそうとした人もいたという。 だが、なぜ「粉ミルク」なのか? それも酪農国でもない香港が

    moondriver
    moondriver 2013/03/11
    聞いたような名前だと思ったら「RTせずにふぁぼったらブロック」とかツイッターで色々元気一杯な人だっけか。記事自体は面白い
  • 政治家を育てる質問

    12月16日の衆議院選挙投票日。テレビ東京の開票特番「池上彰の総選挙ライブ」を担当しました。 放送中から思わぬ反響をいただき、テレビ東京にはいまも再放送やDVDの発売を求める声が寄せられているそうです。 テレビ東京の人たちはもちろんのこと、外部スタッフが総力を挙げて制作・放送したものですから、当然の評価とはいえ、その一翼を担った私も嬉しく思います。 いつも「いい質問ですね」が口癖の私としては、視聴者に「いい質問ですね」と言ってもらえる内容を目指したからです。 ただ、党首や候補者への私のインタビューは、ジャーナリストとして当然のことをしたまでで、これに関する評価は面映ゆいものがあります。 というのも、たとえばアメリカテレビ政治番組なら、政治家に対しての容赦ない切り込み、突っ込みは当然のことだからです。 日なら「失礼な質問」に当たるようなことでも、平然として質問をしますし、質問を受けた側

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