私たちが毎日当たり前のように口にする食物や酒。その起源を約700万年前にさかのぼり、人間との関わりや人間性の起源などについて探っているのが、山極壽一・京都大学総長だ。山極総長は、ゴリラなど霊長類の研究を通して人間の本質を探究する人類学者として世界的に著名で、この分野の第一人者である。 京都・滋賀・奈良の有識者による「比叡会議」*は、ここ2年続けて食と酒をテーマにさまざまな視点から議論を重ねている。会議の世話人の1人である山極総長は、当インタビューでも食と酒の奥深い歴史を解き明かし、「それはいつの時代もジオポリティクス(地政学)の対象として、政治戦略に使われてきた」と指摘する。 現代社会は家族で食卓を囲む機会が減り、それぞれバラバラに食事をする「個食」が増えている。「個食は人間がサル化している現象。それは人間性を形づくる家族のコミュニケーションの場を疎かにしてきた現代社会の負の側面でもある」
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