まだ幼稚園にも入る前のこと、私には大好きな遊びがあった。母親は仕事に行き、祖母が畑にでてしまっている間。 誰もいなくなったのを見計らって、普段は開けるなと厳命されている母親の裁縫道具をいれるプラスチックの箱の中から手芸用の白いゴム紐をこっそり取り出す。ゴム紐の端を、まずは手が届く箪笥の抽斗に挟む。そのままゴム紐を伸ばし、反対側にあるおぜんへ。おぜんの脚にゴム紐をくぐすと、つぎはテレビのぼっこりと出張ったスイッチへ。ふすまのささくれに、鴨居にぶらさげられた衣文掛けにと、部屋のありとあらゆる「ひっかかり」にゴム紐を張り巡らせていく。ボール紙にきれいに巻かれていたゴム紐を解ききってしまうころには、部屋を縦横無尽に張っているゴム紐が、巨大な蜘蛛の巣を作り出す。親の裁縫道具を持ち出していたずら?いや違う。この「遊び」はここからが始まりだ。 張り巡らせたゴム紐製の蜘蛛の巣を崩さないように、そっとその下
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