日本に関する多くのことについて、僕は英語をとおして学んだ。英語をとおしてとは、抽象化して、と言いかえてもいい。そしてさらに、抽象化してとは、余計な邪魔ものなしに、と言いかえることが出来る。 たとえば『源氏物語』に関して、邪魔になるものと言えば、「紫式部」「日本そして世界初の長編小説」「光源氏」「平安時代」「宮廷生活」といった日本語だ。このような単語は、すべて、大学入学試験につながった高等学校の国語の授業を僕に連想させ、『源氏物語』とのあいだに距離を作ってしまう。と同時に、いま列挙したような言葉をつないでいくと、『源氏… 底本:片岡義男エッセイ・コレクション『本を読む人』太田出版 1995年
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