凡庸なる「哲学史入門」の本がたくさん生産されている。凡庸と言って悪ければ、常識に沿った内容だということだろう。つまり、近代ヨーロッパで成立した「哲学」のやり方を「よし」として、それについての基本知識を解説してあげようという本である。古代・中世と東洋(アラビアを含め)についてはほんのサワリ程度ですませ、デカルト以降がかなりくわしく現代までやって、最後にテーマごとに「考えてみよう」的な項目が並ぶ、というのが標準的な構成だ。だいたい高校の「倫理」の参考書と大差はない。ただ、高校の倫理では、ルネサンスについていまだに「宗教に支配された中世の迷妄を破り、人間的主体性の思想を確立した」のごとき古くさい観念が生き残っているので、そういう部分では新しい見方が取り入れられてはいる。 だが、こうした本をいくら読んでも、結局哲学というのは何を明らかにしようとするのか、よくわからないままである。つまり、人それぞれ