『ん 日本語最後の謎に挑む』(山口謠司/新潮社) あいうえおの五十音図の枠外にぽつんと置かれた「ん」の文字。改めて、みなさんはどんな印象をお持ちだろうか? 「独特の存在感」「孤高」「最後にある“どや顔感”」。さらに、流行りの擬人化をしてみると、「どこから来たのかわからない転校生」との意見が筆者の周りでは聞かれた。なるほど、やはりほかの文字とは一線を画した雰囲気を感じる人は多いようだ。 それもそのはず。実は「ん」という文字はかつて日本語にはなかったらしい。少なくとも『古事記』や『日本書紀』『万葉集』など上代の書物に「ん」を書き表す文字が見当たらないという。では、「ん」とはいったい何者なのか。どこからやってきたのか。そのミステリーを解き明かすのが、『ん 日本語最後の謎に挑む』(山口謠司/新潮社)である。本書を読むと、普段いかに「ん」をナメていたのかがよくわかる。 「ん」は言葉によって発音が違う