「虫と歌」 2006年四季賞夏 四季大賞作品 月刊アフタヌーン10月号付録より 市川春子 月刊アフタヌーン四季賞2006年夏の大賞受賞作品が市川春子「虫と歌」である。 高野文子の亜流というにはあまりにも惜しい、哀しい物語である。昆虫の模型作り……というよりも新種の昆虫作りを生業としている兄と、弟・うたと妹・ハナの3人暮らし。兄は変な仕事ではあるが、特別に貧しいわけでもなく友人関係に不自由しているわけでもない高校生のうたは、やがて訪れる別れをいかに知り、いかに甘受するのかが本作の山場である。 ぱっと見、ほんとに高野文子なんである。「棒がいっぽん」の「奥村さんのお茄子」から最近の「黄色い本」くらいの高野調をそのまんま写し取ったかのような絵と演出なんである。正直、びっくりした。高野の新作じゃん、と思うくらいだったからだ。で、単なる模倣という次元に落とし込んで語れるほどのちんけな作品