2020年10月13日17:00 by 東京創元社 新井素子『絶対猫から動かない』、伊坂幸太郎『逆ソクラテス』…「ミステリーズ!101号」(2020年6月号)書評 瀧井朝世[文芸全般]その1 カテゴリ国内ミステリ 新井素子作品にはまったのは中学生の時だった。それから幾星霜。新作『絶対猫から動かない』(KADOKAWA 2200円+税)をめくって、一気にあの頃に引き戻される――という感触はなかった。むしろ、「ああ、“今”の新井素子がいる!」という感慨がわいてきた。というのも、主要人物たちはみな50代以上の大人たちなのだ。 絶対猫から動かない (角川書店単行本) 地震によってしばらく停車した地下鉄に乗り合わせた日から、56歳の大原夢路は毎晩のようにその時の夢を見ている。やがて彼女はその車内に、人を喰らう生き物がいることに気づく。どうやら車内に結界が張られたらしいのだ。その日同じ車両に乗り合わせ
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