地方にいるからこそ、見えてくるものがある。東京に集中する大手メディアには見過ごされがちな、それぞれの問題を丹念に取材する地方紙、地方テレビ局。彼らはどのような信念と視点を持ってニュースを追いかけるのか? 香川と岡山を放送エリアとするKSB瀬戸内海放送による調査報道を取り上げます。 「福祉利権」の構造に挑む 『福祉と利権の構造』。今から15年前の2006年、KSB瀬戸内海放送の若手記者だった山下洋平が夕方ニュースで10カ月間、計13回にわたって報じた特集と、それをまとめたドキュメンタリー番組のシリーズタイトルだ。高松市の特別養護老人ホーム建設に国と市から支給された6億円の補助金をめぐる汚職事件を追っていた。 事件は前年秋、施設を運営する社会福祉法人の理事長と市会議員が贈賄罪で起訴されたことから始まる。「陰の市長」と呼ばれ、補助金認可に強い影響力を持つ市の助役に200万円を渡すよう市議が理事長