小さい頃、自分の意識や感覚、感情を有しているのは自分だけなのだ、ということにある日急に気づいて、たじろいだ記憶がある。誰もわたしの見たもの、聞いたもの、感じたものを完璧に共有することはできない。わたしの全てを知っているのは、わたししかいない。そして、わたしはわたしという肉体にしか乗ることはできず、他の誰でもない。他の人たちも、それぞれの自分に閉じ込められたまま、出てくることはないのだ、ということをぼんやり思った。 自意識の芽生え、といったところだろうか。ある日、病院で注射をされて、とても痛くて、いとこのお兄ちゃんに泣きながら注射された腕を見せたのを覚えている。こんなに痛いのに、こんなに大好きなお兄ちゃんなのに、この痛みはわかってはもらえない。わたしは泣いてるのに、彼は少しも泣いていなかった。あたりまえだけど。この痛みをお兄ちゃんは感じられないのだな、ということに気づいて、途方にくれた気分に