後輩の男の子から、以前こういうことを聞かれた。どうやったら、普通の話ができるのか。なかなかすごい問題である。彼は、世間一般でいうところの「普通の話」ができないことに悩んでいるという。「俺、普通の話って、なんかできないんすよねー」。というのも、彼は音楽がすきで、DJをしているため、わたしといるときは、レコードやクラブの話をすることができるのだが、それ以外の分野、自分の興味のない範囲に話題が及ぶと、なにをいっていいのか見当がつかず、まるで会話にならないらしいのだ。 しかし、わたしにはなんとなく理由がわかる。彼がなぜそんなことで悩んでしまっているのかというと、彼は、会話というのは、自分が一方的に、相手になにかを話すだけのものだとおもいこんでいるからなのであった。つまり質問をしないのである。相手の話を聞くということを、あまりよくわかっていないのである。たとえば、彼はレコードの話をするが、それはあく
「浮気をすると、かならず彼氏にばれてしまう」という女の子がいるのだが、その理由がとてもおもしろかった。うそが下手なわけでも、彼氏の監視がきびしいわけでもない。「どうしてもがまんできなくて、自分から言っちゃう」のである。お前はばかか。わたしはついわらってしまったのだが、よく考えてみると、これはわらえない事態なのではないかと感じたのである。 精神科医の春日武彦は、自著の中でこう述べている*1。「人は秘密を持つことで人間的な豊かさを得られる。清濁合わせ飲む度量が必要なのである」。これはいい視点である。わたしがわらえないと感じるのは、浮気をすることなどではもちろんない。浮気をした自分自身を、心のどこかにこっそりとしまって、なにごともなかったようにふるまうことができないという、だらしなさのようなものだ。春日はこう続ける。「秘密を抱きつづけるには、精神的なエネルギーが必要となる。そのエネルギーが日常を
25歳までふらふら遊んでいた、ともだちの女の子が、ついに就職することを決め、職探しをしているところだという。彼女の話をいろいろと聞いていると、とても興味ぶかく、社会経験のあまりない子たちが、「就職をする」ということをどうとらえているのか、わずかだが、わたしなりに気がつくことがあった。 何社か履歴書を送った、というので、会社名を教えてもらうと、「COACH、プラダ、エスティーローダ」。その子にとって、就職がどういうものなのか、会社名だけでもなんとなくわかる。そういった、きらびやかな会社に入ることが、彼女にとっての自己実現であり、それ以外のよくわからない仕事をするのは、単なる苦役のようなものであるらしい。うーん。気持ちはわかるのだが、働くということに対するイメージが、すこし貧しいように感じた。世の中にはたくさんの仕事があって、どれもがそれなりにおもしろい。どんな仕事だって、やってみればけっこう
わたしは人と会ったとき、まずはじめに、ものすごくふつうに声をかける。たとえば、「天気いいね」とか、「電車で来たの」「もうお昼食べたんですか」といった言葉をいう。わたしはこういう、あたりまえすぎるやりとりが、わりとすきである。以前は、こんなにありきたりのことをいうと、ただのばかだとおもわれないかと心配したこともあったが、あいさつや会話のとっかかりはふつうでいいのだと気がついてからは、「今日は風つよいね」とか、「あたらしい靴、買ったの」とか、そういうことを平気でいうようになった。 こういった言葉のいいところは、相手に対してとても自然なかたちで、あなたのことを気にしていますよ、というメッセージが伝わることである。わざとらしいところもなく、ごくふつうにコミュニケーションがとれる。そこがいい。考えてみると、会話のとっかかりというのは、わりとむずかしいものだ。なにか気のきいたことをいわなくてはいけない
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