「ちょっとおいしい話があるんだけど、興味はあるかい?」 慢性的な金欠病にあえいでいるのを不憫に思ったらしい。投資銀行に就職した大学時代の親友がいきなり電話をかけてきた。都内の一等地にそびえ立つ億ションと戦艦のように巨大なベンツ。ついでにゴージャスな腹回りと、地肌が透けて見える髪型まで手に入れた彼が言う。 「ロシアのエネルギー関連株は、この先まだまだ伸びる可能性がある。小遣い程度の額からでも始められるから、思い切って一口のってみてもいいんじゃないか?」 「小遣い程度の額」にさえ不自由している身としては泣く泣く諦めざるを得なかったが、話の途中で彼の口からは聞き覚えのある単語が出てきた。それが「ガスプロム」だった。 マネーパワーで一気に欧州の表舞台に登場したゼニト。 ヨーロッパサッカーに詳しい人なら、ピンときたのではないだろうか。ガスプロムとはゼニト・サンクトペテルブルクのスポンサーを務める企業