■大地から生まれる都市の気配 「タウンウオッチング」や「路上観察」の言葉とともに80年代に始まり、今やブームが定着した東京の街歩きだが、近年、特異な動きが目を引く。起伏に富む東京の地形に注目し、その特徴と面白さをマニアックに探求する試みだ。超高層ビルが増え、古い建物や路地が消え去るなか、逆に時間を超越して存続する大地の重要性にこだわり、その凸凹地形が生む摩訶(まか)不思議な都市の気配に、東京らしさの神髄を見抜く。抵抗の精神と洒脱(しゃだつ)さを併せもつ独特の都市論だ。 ■太古の歴史から この道を切り開いたのが、タモリと中沢新一という立場の違う2人の論客なのが興味深い。『タモリのTOKYO坂道美学入門』(2004年)は、坂道の高低差が大好きなタモリが自ら都内の坂道を写真でとり、勾配や湾曲の具合を確かめ、名前の由来等からトポス(場)を描く街歩きの決定版。それが現代東京に隠れた歴史を発見するNH