被災地に本を送るな、という声が上がっているらしい。混乱の極みにある避難所などに、段ボール箱に本や雑誌を詰めて送ったところで、そんなものは誰も読まない、ゴミになるだけだ、という。もっともな批判に聞こえる。しかし、そうした批判の「正しさ」に萎縮して先に進めなくなるのであれば、それはとても不幸なことだ。 わたしは実は、東日本大震災のあと、三カ月足らずが過ぎた頃に、関わりのあった岩手県の遠野市で、全国に呼びかけて本を送ってもらい、それを被災地に献本する運動を始めている。そのときの体験を思い出しながら、書き留めておきたいことがある。 三陸沿岸の村や町からは、いくつもの声が聞こえてきた。本を読みたい気持ちはあるが、避難所に届いた段ボール箱を開けると、不要になった本や雑誌を詰め込んだのか、避難している人たちが読めるものは少なかった。学校に届けられた箱には、大人向けの週刊誌ばかり、ということがあった。いつ