スニは/十二才の女の子、左と右とがそろわない/かたちんばの運動靴を履いている/貧しい 朝鮮の子/いつも/日本の子どもたちに/いじめられたときは/真赤な夕日を見つめて/涙にうるむ/ひとりぽっちの女の子 海のむこうの/朝鮮の子供ばかりが遊んでいる/ふるさとを思い出しては/涙にうるむ/友達のいない女の子 スニのオモニは/日本へ出かせぎに行って/六年たっても帰って来ない/アボジをたずねて/玄界灘を渡った/オモニはスニの手を/かたく握り/スニはオモニの下裳を/しっかとつかまえて/母子がはじめて聞く日本の言葉に/わけもわからずおののきながら/汽車に乗った 下関から幌内への道は/如何ばかり遠かったことだろう/北海道から/九州の飯塚までの道は/どんなにかけわしかっただろう/スニのオモニとスニは/二年もかかってアボジを/ヒロシマで会った/ナガサキで会った スニがヒロシマの/石橋の上で/黒くすがたを焼きつけた