平成11年6月29日未明から,前線の移動に伴って降りはじめた雨が,午後になってから急に強くなり,広島県全域に大雨をもたらした.特に,13時から16時にかけて広島市佐伯区から安佐北区へ向かう北東に延びる帯上と,15時から18時にかけて呉市から東広島市に至る帯上の狭い範囲に大雨をもたらした.豪雨が来襲したこれらの場所では,1時間雨量にして40mm~70mmの雨が記録されている. 今回の災害の特徴は,23日からの先行降雨で緩んでいた地盤に急激に増大した降雨が極めて短い時間に集中したこと,降雨量の急激な増加から2時間ないし3時間後のほぼ同時刻に災害が発生したという所にある.このように,危険を察知してから住民が避難を行うまでに十分な時間がなかったため,突発的に発生した斜面崩壊と土石流等によって31名の死者,1名の行方不明者を出した(7月10日現在).この人的被害の多くは,豪雨が集中した広島市及び呉市