2021年7月3日。静岡県熱海市で山から流れ落ちてきた巨大な土石流は、多くの人の命と生活、そして夢までも破壊した。その1週間前、熱海で民宿を営もうと借金をして一軒家を購入した在日中国人の徐浩予さん(29)は一瞬のうちに家と全財産を流された。「人生が終わった」。徐さんは孤立無縁の異国の地で、絶望に突き落とされた。そんな若者に生きる希望を取り戻させたのは、避難所などでめぐりあった被災者たちの支え合いだった。絶望の淵から立ち上がり、これからは「本当の自分の人生」を生きると決めた若者がたどった、再生への1年とは。 [三日間の大雨と土石流が破壊した、夢と希望 ] 災害関連死を含め27人の命を奪う甚大な被害をもたらした熱海市の土石流災害。丸1年たった今年7月3日午前10時28分、地元では多くの人が黙祷を捧げた。現場の伊豆山地区は高台の閑静な住宅地だが、今は一部が避難区域に指定され、立ち入りは禁止。復旧