家父長制社会が抑圧し、排除し、後景化してきた〈魔女〉。それはただ、自立と自由を求めて飛び立とうとしている女性たちでした。アニメ『水星の魔女』を中心に〈魔女〉文学を読み解いた、英文学者の小川公代さんによる連載評論「翔ぶ女たち」第3回「魔女たちのエンパワメント——『テンペスト』から『水星の魔女』まで」(『群像』2023年9月号掲載)より、第1節の一部を再編集してお届けします。 娘の成長物語としての『水星の魔女』 私は幼い頃から、女は家庭に縛りつけられるものという固定観念に反発してきた。女が、ましてや少女が一人で海外に行くなど考えられないという風潮のなか、当時11歳だった私は、突発的にペンパルのいるアメリカのケンタッキー州に一人で訪ねていくという無謀な計画を立て、父を味方につけ、実行した。母は泣いて私に懇願した。「きみちゃん、行かんといて。女の子一人では無理やから」。 今考えると命がけの計画だっ
![『水星の魔女』が画期的である理由。従来のアニメに描かれてこなかった新しい「魔女」の姿(小川 公代)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/202cf21b1b423effdf50d6aad9bb7f7b7556c3ff/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fgendai-m.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2Ff%2F6%2F1200m%2Fimg_f69fd328e7122895e5b29f94c3ad33ce209517.jpg)