自分が人のプライバシーを書く以上、 自分もそれ以上に書かれなければいけない。 ――『境界の町で』を読んでみると、プロローグを初めとして全編にわたって30代の女性であるご自身が置かれた状況、その時に何を思っていたのかという心の動きが克明に描かれています。時には読んでいる方が「こんなことまで」と思うほど赤裸々に心情を吐露されていて、「私小説」なのか「ノンフィクション」なのか、その境界がわからなくなることがあるほどです。そこまでして「一人称」にこだわった理由はどこにあるのでしょうか。 岡 私は10年以上、雑誌の編集者・記者としてやってきました。今回、災害の話を書くにあたり、「三人称で書くのはどうなんだろう」と疑問を感じたんです。新聞や雑誌は三人称で書けばいいけれども、ずっと「自分の意見はどこなのか」と感じていたんです。三人称で書いてしまうと、「神の視点」というか、書いた出来事がすべて他人事になっ