アップルが新製品「iPad」をサンフランシスコで発表した1月27日。会場のヤーバブエナ芸術センターに入っていくと、聞いたことのあるメロディーが耳に飛び込んできた。ボブ・ディランである。 ♪痛い目に遭うぞと忠告されても/君は冗談だと思ってたよな/ぶらぶらしている連中のいうことなんか/昔の君は笑い飛ばしてた(ライク・ア・ローリング・ストーン) 発表を行ったアップルの創業者にしてシリコンバレーのカリスマ、スティーブ・ジョブズ同社最高経営責任者(CEO)が、ディランの大ファンであることはよく知られている。もっとも、ジョブズ氏がこの日のBGMにディランを使った背景については、もう少し深読みしたくなる。 シリコンバレー発のコンピューター革命は、サンフランシスコを震源地として1960年代を席巻したヒッピー文化や学生運動と分かちがたく結びついている。 あしき知識の独占の象徴とみなされていたコンピューターに