当時はまだ「移籍」という言葉は、身近なものではなかった。 この言葉を意識するようになったのは、プロサッカーリーグ(Jリーグ)がスタートした1993年頃から。日本人選手にとってはまだ縁遠いものだったが、今後は日本のサッカー界にも馴染んでいくのではないかと私は感じていた。 その当時の「移籍」は、どちらかといえばネガティブに感じられていた記憶がある。移籍する日本人選手はJFLからJリーグクラブへ移ることがメインで、Jリーグのクラブ間の移籍はまずない……というよりも、できないと考えられていた。移籍は助っ人外国人が行うものだというイメージを持っていた選手も多かったはずである。 そんな時代だったので、日本人選手の国内移籍は世間的にもタブーのように扱われていた。しかしJリーグも25年が経過し、当時タブーと見られていた「移籍」に対する考え方、その使い方、制度など取り巻く環境のすべてが大きく変わった。今では