NASAジェット推進研究所(JPL)のオフィスの壁には1枚の絵が飾られています。まるで「イタズラ書き」のようななその絵は、額に入れられて大切にされているといいます。いったい「絵」はなにを意味しているのでしょうか。「この絵こそが人類の火星観を根底からひっくりかえした」と小野さんは興奮を込めて解説します。絵に込められた、宇宙探査の記憶とは。52年前の興奮がよみがえります。 僕が勤めるNASAジェット推進研究所(JPL)186号棟のオフィスの壁に、一枚の「ぬり絵 」が額に入れられて大切に飾られている。 紙を赤やピンクのパステルで塗りつぶしただけの手描きの絵だ。 近づいてみると、紙には無数の数字がタイプされている。まるでイタズラ好きの子供が、父親のカバンから盗み出したデータシートに落書きしたようだ。 なぜこんなぬり絵がNASAで大事に保存されているのか? これこそが、52年前に史上初めて火星から届