映画「ザ・テノール 真実の物語」 「事実は小説より奇なり」。実話を基に描いた名画を見る度に英国詩人、バイロンが遺(のこ)したこの名言が脳裏をよぎる。11日公開の映画「ザ・テノール 真実の物語」は、がんの手術で失った声帯の機能を取り戻し、オペラ界の第一線へ復活を遂げる天才テノール歌手、ベー・チェチョルさんの奇跡の実話だ。絶望の淵から復帰を果たすその影に、何人もの日本人の友情や情熱が絡んでいた事実が明かされる。見る者誰もがこう思わずにはいられないだろう。「世界にはまだこんな素晴らしい奇跡の実話があるのだ」と。(戸津井康之) まさに「ブラック・ジャック」 不可能を可能にした手術 音楽関係者を対象に大阪市内で行われたホール試写。「本日、この会場にゲストが来ています」。上映後、1人の日本人の名前が告げられると、会場は大きな拍手と歓声に包まれた。 会場後方の席で立ち上がったのは外科医で京都大学医学部名