またクリスマスが来る。毎年よくやってくるものだと思う。毎年やってくるのはクリスマスと限らないのだが、なにかとそこに刻む思いが多いのでそんな気がするのだろう。信仰という意味での宗教に私はほとんど関心を失ったが、逆に神学者ティリヒについてはその組織神学を学ぶより平易に米語で説かれた説教集のほうが歳を取るにつれ心に響くようになった。そりゃ組織神学など凡人まして日本人には理解できないからだとも思っていたが、逆なのかもしれない。ティリヒは説教においてその組織神学を越えるなにかを語っていたのではないか。 第三説教集「永遠の今」には「考え方では大人となりなさい」という題の説教があり、終わりのほうにクリスマスの言及がある。クリスマスの際の説教であろうか。標題は凡庸なまさにお説教という印象を与えるし、最初に引かれる聖句(第一コリント一四の二〇)もそれだけ読めば特にどうということはない。訳は白水社著作集より。