呉智英氏は昨年末、宮崎哲弥氏との対談『知的唯仏論』、書き下ろしの『吉本隆明という「共同幻想」』と立て続けに著書を出版しました。 いずれも興味深い内容の本であり、特に後者は戦後の言論空間の欺瞞性を告発する、切れ味鋭い筆鋒を堪能することが出来る力作です。 現在の呉智英氏は東京を離れ、いくつか抱えていた雑誌連載も数を減らしたことで、書き下ろし本の量産体制に入ったんでしょうかね。 やはり書き下ろしの『現代人の論語』『つぎはぎ仏教入門』などもわりと最近の著作ですが、80年代末~00年代頭くらいまではほとんど雑誌コラムの再録本ばかりだったという状況に比すれば、氏のまとまった思想が読める、という意味では最近の活動は長年の愛読者としては喜ばしいことかもしれません。 ただ、『封建主義者かく語りき』『バカにつける薬』『サルの正義』『賢者の誘惑』などといった初期の著書に見られたような奇抜な発想、誰も思いつかなか