中学二年生の頃、子供部屋の窓ガラスを直すためにガラス屋さんが来た。 季節はちょうど今ぐらいの、夏休みが始まった頃だったと思う。 自分の部屋なので、部屋に居ながらガラス屋のおじさんの修理手際を見るとはなしに見ていたら ふと、おじさんが話しかけてきた。 「これは君が割ったの?」 「ええ」 「楽しかった?」 「…え?」 「」 「ガラス屋さんはガラス割って楽しむのですか?」 「…」 そこでようやく気付いたけれど 要するにガラス屋は何か、 「中二少年が家庭内暴力の果てにガラスを割った」 というようなストーリーを早合点して、 含蓄の有る説教でも垂れようと考えたらしかった。 それから口数の少なくなったガラス屋の後ろに密着して ・兄のノーコンパスで目覚まし時計がガラスを突き破った顛末 ・ガラス修理代は兄と自分の折半であること ・つまりクライアントはかーちゃんではなく自分であること などなどを 作業が終わる