11月6 世界最小のヘリウム風船 ドイツ・フライブルク大学のHorst Prinzbach教授が、この9月に亡くなったそうです。81歳でした(ChemistryViewsの記事)。 Prinzbach教授は芳香族化合物の研究などで知られましたが、最も有名な業績はドデカヘドランに関するものでしょう。正12面体構造の完璧な対称性を持つこの炭化水素は長年化学者たちのあこがれであり続け、「有機化学のエベレスト山」とも称されました。 ドデカヘドラン この構造を追い求め続け、1982年ついにこれを陥落させたのがLeo Paquette教授でした。30段階近くを要し、一歩一歩炭素を積み上げる手法で目的に到達しています。 この5年ほど後、工程を半分ほどに短縮して見せたのがPrinzbach教授です。下図のような炭化水素「パゴダン」をまず合成し、これを異性化させることでドデカヘドランを合成しています(論文)